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2017年

2017年11月27日

塩野 雄太君(82回) 第52回アメリカ側弯症学会(SRS2017)Russell A. Hibbs Basic Research Award受賞

2017年9月6日~9日の4日間、米国フィラデルフィアで開催された第52回アメリカ側弯症学会(SRS2017)において、塩野雄太君(82回)が“Propionibacterium acnes only survives in the presence of implants and causes late infections”の研究でRussell A. Hibbs Basic Research Awardに選出された。
 塩野君は、整形外科学教室の感染症研究グループにおいて、石井賢君(現国際医療福祉大学医学部整形外科主任教授・慶應義塾大学医学部特任教授)の指導の下、アクネ菌感染症についての研究を行った。本研究は先行する臨床研究における疑問からはじまった。側弯症手術において手術中の術野の清潔度の評価を行ったところ、清潔であると思われていた術野に実に多くの細菌が検出され、その中でもアクネ菌が最も多く検出されたことから、アクネ菌感染症の病態解明を目指してはじまった研究である。アクネ菌感染症は整形外科領域のみならず脳神経外科、乳腺外科、心臓血管外科などでも近年臨床例での報告が増加している。特に側弯症手術の領域では遅発性感染症の起因菌として近年注目されており、インプラントを抜去しないと治癒しない非常に難治性な合併症とされている。しかしながら皮膚常在菌であるため臨床感染報告はコンタミネーションの可能性を否定できないという指摘や、そもそも弱毒菌であるアクネ菌が生体内で病原菌として感染を成立することができるのか懐疑的な意見もあり、その病態はまだ不明な点も多く基礎的研究による解明が期待されている分野であった。
本研究ではプロピオニバクテリウム・アクネス(アクネ菌)による遅発性感染症の成立とインプラントの存在との関係を検証した。マウスの大腿骨にアクネ菌とチタン合金棒を同時に封入した骨髄炎モデルと、アクネ菌のみを封入した骨髄炎モデルを作製し、バクテリアを捉えるプローブでアクネ菌を標識し、光イメージング法を用いて非侵襲的に生体外から6ヶ月間観察を行った。その結果インプラントあり群でのみ6か月にわたるアクネ菌感染を認めた。このことから、アクネ菌は生体内で感染を維持する事が可能であり、さらにアクネ菌による遅発性感染症の成立にはインプラントの存在が必須である事を証明した。
さらに、アクネ菌慢性骨髄炎モデルを詳細に評価し、インプラント周囲にバイオフィルムを形成しバイオフィルム内で活発に活動するアクネ菌を捉える事に成功した。本来弱毒菌で嫌気性菌であるアクネ菌が、インプラント周囲にバイオフィルムを形成することで宿主の免疫を逃れ、長期にわたり感染を維持できる事が判明した。
 本研究は今後さらに検討すべき課題は残しているものの、臨床上、重大な問題であるインプラント手術後のアクネ菌感染の病態を、世界で初めて光イメージング法を用いた動物モデルで明らかにした点で有意義な基礎研究であると評価された。今後も本研究を基にさらなるアクネ菌感染症の研究の深化、感染予防の研究の発展が望まれる。


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